Art Point Picks
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[ ソール・バスの世界 ]
ソール・バスは、数多くの映画のタイトルバックを手掛け、世界中の企業ロゴや商品パッケージのデザインでも有名な20世紀を代表するグラフィック・デザイナー。現代も多くのクリエーターが尊敬する1人である。ちなみに彼は、かの有名な『サイコ』のシャワーシーンの絵コンテも担当し、75歳で亡くなるまで、ヒッチコック監督作など60本近いタイトルを手掛け、第一人者として活躍した。
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本作は、彼自らが登場し、自作の映画・タイトルバック映像10作品を紹介しながら、その制作意図を解説する「ソール・バスの映画タイトル集」と、妻エレインとの共同制作で68年度アカデミー賞最優秀短編ドキュメンタリー賞に輝いた「なぜ人間は創造するのか」、から成る。映画界にタイトルデザインの分野を確立し、「芸術」の域にまで高めた彼の作品は、映画ファンのみならず、アートやデザインを担う者にとって多大な影響を与えている。 -
[ Court and Spark ]
20世紀に確立された“シンガーソングライター"のパイオニア、ジョニ・ミッチェルの代表作。少女趣味的センスと成熟した女の感性が微妙な緊張感を保ちながら同居している不思議な世界は、ジョニの音そのもの。細部まで神経の行き届いた繊細なメロディーとモザイクのように複雑に絡みあう音のの構成は、一枚の絵を構成する鮮やかな色彩のようでもある。音楽のみならずジョニは、多彩な芸術家として写真や絵画など多方面で活動しており、自ら作品のジャケットデザインを手掛ける。このジャケットの絵もジョニが描いたものであり、デビュー以前は、美術学校に通い、本当は画家になることを夢見ていたという。「ミンガス」でも自らジャケットの絵を描いているが、ヴィジュアルだけで十分な評価を得られる天才的な感性を感じさせる。
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[ ゴッホ ]
『ザ・プレイヤー』(1992)、『ゴスフォード・パーク』(2001)等、とにかく登場人物の多い力技の作品で、賞を総なめにしてきたロバート・アルトマン監督が、偉大なる画家ゴッホの人生に挑んだ作品。
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映画は現代のオークションシーンから始まり、ヴァン・ゴッホと弟テオのやり取りにシーンは移っていく。当時の生活や風俗が沢山描かれおり、ヴァンがどんな環境でどんな風に絵を描いていたかが想像しやすい。この映画で注目したいのは弟のテオ。下敷きにあるのがテオの書簡ということもあり、兄に悪態をつきながらも高価な絵の具や浮世絵を与え、自分の画廊で作品を売ろうとする弟の真摯な姿が全体に描かれる。最後にヴァンが自殺してもそこで映画は終わらない。ラストは兄を失い自身も精神を病んだテオの姿で幕は閉じられる。 -
[ 去年マリエンバートで ]
『夜と霧』(1955)、『Hiroshima, mon amour(二十四時間の情事)』(1959)など、「記憶」をテーマにした問題作を数多く世に出し2014年3月に逝去したアラン・レネによる、彼の作品の中でも特に難解とされる作品。
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単調な現代音楽の旋律と抑揚の無いナレーションを背景に、巧緻なカメラワークが映し出す光景は、中世ヨーロッパの豪奢な建築を思わせる城館の内装や、抽象絵画やシュルレアリスムの構図を思い起こさせる庭園である。一人の男がその城館で、「去年会った」と記憶している女に出会い声をかけるが、彼女はそのことを「覚えていない」。黒澤明『羅生門』(1950)の影響が随所に見られるストーリー展開は、観る者をイメージの迷路に迷い込ませてしまうかのようだ。映像、音楽、台詞、どれもが詩的で難解であるのになぜか引き込まれてしまう、魅惑的な映画。 -
[ Sticky Fingers ]
70年代ストーンズの作品の中でも『メインストリートのならず者』と並ぶ傑作!
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本作のアートワークはアンディ・ウォーホルによってデザインされた。ジャケットには本物のジッパーが取り付けられ、それを開くとブリーフが印刷されたカードボードが出てくる。このジャケットは論争を引き起こし、後にジッパー無しのジャケットがリリースされた。スペインではジッパージャケットが猥褻であるとされ、缶詰入りの女性の指が描かれた物に変更された。ちなみにストーンズのレーベルの有名なロゴである「tongue」ロゴはアンディ・ウォーホルの手によるものとよく耳にするがそれは間違いで、「tongue」はミック・ジャガーの発案によるヒンドゥー教のカーリー神の舌をモチーフにジョン・パッシュ(John Pasche)がデザインし作成したものである。アンディ・ウォーホールは『スティッキー・フィンガーズ』、『ラヴ・ユー・ライヴ』のアート・ワークを担当した。 -
[ I♥U ]
文字によってさまざまな形をつくる詩の表現をカリグラムといい、アポリネールが得意とした。現代風にいえばアスキーアートといったところか。ただしアスキーアートがただの文字の羅列であるのに対して、カリグラムは文字の並びによって意味を持つ文章にしなければならないという違いはあるのだが。
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さて本作の歌詞カードは、さながらミスチルのカリグラム詩集となっている。歌詞が、それぞれの曲のイメージを表す絵を描いているのである。例えば「Monster」という曲の歌詞の文字は、そのままモンスターと叫び声を表している。これ以外にもさまざまなカリグラムがあるので、これは何であろうかと考えながら聴くのも楽しいものである。ところで評者は、「ランニングハイ」の絵が何を表しているのかどうしても分からないのだが。 -
[ ヘンリー・ゲルツァーラー ポップ・アートに愛された男 ]
1970年、ニューヨークのメトロポリタン美術館で「New York Painting and Sculpture:1940-1970」と題された43人のアーティストの約400点の作品が一堂に会する歴史的な展覧会が行われた。企画したのは、伝説的なキュレーターとして知られるヘンリー・ゲルツァーラーである。彼は彼自身がモチーフとして登場するなど、多くのアーティストに慕われ、愛される存在であった。
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このドキュメンタリーではアートシーンの変遷とともに、彼と交流のあった著名なアーティスト、キュレーター、ギャラリストら関係者たちの証言や当時の記録からヘンリーの人物像を明らかにしていく。プリティ・シングス、エリック・ドルフィー・カルテット、ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンドらの軽快な曲が、戦後のニューヨークにおけるアート界の熱狂的な雰囲気をよりいっそう印象的に伝えてくれる。