Art Point Picks
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[ 「メットガラ ドレスをまとった美術館」 ]
メトロポリタン美術館で毎年開かれる世界最大のファッションイベント、メットガラ。
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本作は、メットガラ主催者でファッション誌VOGUE編集長のアナ・ウィンターと、メトロポリタン美術館の学芸員アンドリュー・ボルトンがタッグを組んでメットガラを開催する過程を追ったドキュメンタリーである。
作品が撮影された2015年のテーマは「鏡の中の中国。」2人はアーティストやデザイナー、美術館のアジア美術部門などと交渉を重ね、難航する話し合いや数々のトラブルを乗り越えて華やかな舞台を作り上げていく。
世界最大のファッションイベントと、史上最多の入場者数を記録した展覧会の裏側で起こる様々なドラマを余すこと無く味わえる作品。 -
[ ゴッホ 最期の手紙 ]
「ひまわり」「夜のカフェテラス」などで知られる印象派の巨匠フィンセント・ファン・ゴッホの死の謎を、全編油絵風のアニメーションで描き、解き明かしていく異色のサスペンスドラマである。
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郵便配達人ジョゼフ・ルーランの息子アルマンは、父の友人で自殺した画家ゴッホが弟テオに宛てた手紙を託される。
テオに手紙を渡すためパリへと向かったアルマンは、その過程でなぜゴッホは自殺したのか、その疑問が募っていく。
俳優が演じた実写映像をもとに約6万5000枚におよぶ油絵が描かれ、アニメーション化するという手法で作られた。
出演した俳優はダグラス・ブース、ヘレン・マックロリー、シアーシャ・ローナン、エイダン・ターナーら。日本のアニメーターも参加した圧巻の油絵アニメーション作品であり、芸術作品である。 -
[ ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像 ]
「こころに剣士を」のクラウス・ハロ監督が、作者不明の「運命の絵」に魅せられた老美術商とその家族を描いたフィンランド発のヒューマンドラマ。
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年老いた美術商オラヴィは、家族よりも仕事を優先して生きてきた。そんな彼は、音信不通だった娘から問題児の孫息子オットーを、職業体験のため数日間預かってほしいと頼まれてしまう。
ちょうどその頃、オラヴィはオークションハウスで1枚の肖像画に目を奪われる。価値のある作品だと確信するオラヴィだったが、絵には署名がなく、作者不明のまま数日後のオークションに出品されるという。
オットーとともに作者を探し始めたオラヴィは、その画風から近代ロシア美術の巨匠イリヤ・レーピンの作品といえる証拠を掴む。
数日間の職業体験のなかで人間関係だけでなく、絵画の販売市場も覗くことができる作品となっている。 -
[ ファッションが教えてくれること ]
雑誌VOUGEの編集長であるアナ・ウィンターに密着し、雑誌が出来上がるまでを追ったドキュメンタリー。2007年には、アメリカ人女性の10人に1人が買っているとされ、映画「プラダを着た悪魔」のモデルにもなったほど影響力のある雑誌である。アナはファッションリーダーとして真摯に仕事にとり組むが故に、シビアな意見で気に入らない写真や企画を却下してしまうので、周りは困惑し意見が対立することもあった。だがそれでも、アナの感性を理解しようとしてしまうほど魅力的で才能に溢れ、アナがいないファッション業界は想像できないと言わせてしまうほどの人物である。
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そんな編集者たちのこだわりが詰まったVOUGEの写真はファッションとしてだけではなく、アート作品としても美しい。作り込まれた設定の中、モデルの恍惚とした表情にきらびやかな装飾が相まって見ているだけで惚れぼれしてしまう。「ファッションを成り立たせるには、産業的な側面と芸術的な側面のバランス感覚が必要である。『ヴォーグ』はその中でも特にクリエイティヴィティに重きを置く媒体である」と言われている。ファッションの域を超え、アート的要素を織り混ぜて創造することで、多くの人々を魅了し続けている。
Netflix/Amazon primeなどで視聴可能。 -
[ MAKE YOU LOOK: A True Story about Fake Art (2020) ]
2000年代初期にNYのアート業界を震撼させた前代未聞のアート偽造事件を追ったドキュメンタリー。165年の歴史を持つ由緒あるNYのアートギャラリーの一つ、ノドラーギャラリーは1995年のある日一人の女性から未発見だったロスコの絵を買う。当時のディレクターであったアン・フリードマンは奇跡の大発見と疑いもせずに次々と彼女が持ち寄る絵画を買い取り、高額で売って行く。一連の出来事はノドラーギャラリーをNYアート界の頂点へと導き、フリードマンは凄腕のギャラリストとして名声を得た。しかしある時同じ女性が持ち寄ったポロックが偽物と判明し事態は一気に変化する。
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事件の当事者であるフリードマン、黒幕と噂される女性の元夫、実際に絵画を複数購入した世界中のコレクター、絵画を鑑定した鑑定士、事件を追っていた当時の記者など実際に事件に関わっていた人物のインタビューから事件を紐解いて行く。
偽物を売った詐欺師がいけないのか、商品を信じて疑わなかったギャラリストがいけないのか。現代アート業界のあり方に一石を投じる作品。総被害額80億円とも言われる事件の真相は是非自分の目で確かめて欲しい。
Netflixにて視聴可能 。 -
[ Yves Saint Laurent (2014) ]
世界的に有名なファッションブランド、Yves Saint Laurenの創設者イヴ・サンローランの伝記映画。1950年代、フランスの片田舎で育ったイブ・サンローランは一大メゾン、ディオールでデザイナーとして働く事となる。ディオールは若き才能を見抜き、サンローランはその独特なセンスで女性のファッションを確立する。ディオール亡き後、弱冠26歳で自身のブランドを立ち上げるが、まだ若かったサンローランは次第にパリの華やかで危険な誘惑に溺れて行く。
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大胆であり繊細で、愛されながらも孤独だったサンローランの一生を生涯のパートナーであったピエール・ベルジェの視点から描く。ベルジェやイブ・サンローラン財団の全面協力で可能となった当時のアーカイブコレクションを作中で一望出来るのは圧巻だ。
Netflix/Amazon Prime/Huluなどで公開中。 -
[ Marie Antoinette (2006) ]
ファンシーでユニークな作品で知られるソフィア・コッポラ監督が描いたマリー・アントワネットはどこの国にもいる普通のティーンエイジャーだ。15歳で故郷を離れ、異国の無口な王子に嫁ぐ事になってしまった少女を誰が責めることが出来ようか。遊び盛りの年頃の彼女にとっては煌びやかな社交界もトレンドのドレスもおいしいスイーツの数々も必要不可欠なのである。そこにはフランス革命の火種となった悪の王妃の姿はなく、ただ純粋に自分の居場所を探す少女の物語があった。
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コッポラの作品は内容もさる事ながら、装飾のセンスに目を惹かれる。お菓子のマカロンのような様々な色で飾られたヴェルサイユ宮殿の内装やキラキラと輝く金装飾の数々は眼を飽きさせない。本作でアカデミー賞衣装デザイン賞を受賞したミレーナ・カノネロによる豪華絢爛でスタイリッシュなファッションにも是非眼を向けて見て欲しい。 -
[ Born To Die ]
儚いハスキーボイスで1960年代を彷彿させるオールドアメリカンサウンドを現代に蘇らせたラナ・デル・レイが歌うのは悲哀な恋の行方だ。2012年にデビューアルバムとしてリリースされたアルバム、Born To Dieはラナの代名詞とも言えるノスタルジックなサウンドに乗せた美しくも危なげのある詩が際立つ名曲で溢れている。時には純粋に恋をする乙女心を歌い、時には禁断の愛に溺れる哀れな女性の嘆きを。表題曲であるBorn to Dieでは愛する人と共に死ぬ覚悟を決めるというドラマチックな内容だがソフトなサウンドが上手く中和してくれる。
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またラナのミュージックビデオも一度観て欲しい。初期の作品にはイメージビデオがあり、どれも古き良きアメリカのスナップショットのようで美しい。後期の作品には1時間を超えるビデオ作品もあり、それぞれが一つのアート作品として完成されている。