Art Point Picks
-
[ Yves Saint Laurent (2014) ]
世界的に有名なファッションブランド、Yves Saint Laurenの創設者イヴ・サンローランの伝記映画。1950年代、フランスの片田舎で育ったイブ・サンローランは一大メゾン、ディオールでデザイナーとして働く事となる。ディオールは若き才能を見抜き、サンローランはその独特なセンスで女性のファッションを確立する。ディオール亡き後、弱冠26歳で自身のブランドを立ち上げるが、まだ若かったサンローランは次第にパリの華やかで危険な誘惑に溺れて行く。
View more
大胆であり繊細で、愛されながらも孤独だったサンローランの一生を生涯のパートナーであったピエール・ベルジェの視点から描く。ベルジェやイブ・サンローラン財団の全面協力で可能となった当時のアーカイブコレクションを作中で一望出来るのは圧巻だ。
Netflix/Amazon Prime/Huluなどで公開中。 -
[ Marie Antoinette (2006) ]
ファンシーでユニークな作品で知られるソフィア・コッポラ監督が描いたマリー・アントワネットはどこの国にもいる普通のティーンエイジャーだ。15歳で故郷を離れ、異国の無口な王子に嫁ぐ事になってしまった少女を誰が責めることが出来ようか。遊び盛りの年頃の彼女にとっては煌びやかな社交界もトレンドのドレスもおいしいスイーツの数々も必要不可欠なのである。そこにはフランス革命の火種となった悪の王妃の姿はなく、ただ純粋に自分の居場所を探す少女の物語があった。
View more
コッポラの作品は内容もさる事ながら、装飾のセンスに目を惹かれる。お菓子のマカロンのような様々な色で飾られたヴェルサイユ宮殿の内装やキラキラと輝く金装飾の数々は眼を飽きさせない。本作でアカデミー賞衣装デザイン賞を受賞したミレーナ・カノネロによる豪華絢爛でスタイリッシュなファッションにも是非眼を向けて見て欲しい。 -
[ Born To Die ]
儚いハスキーボイスで1960年代を彷彿させるオールドアメリカンサウンドを現代に蘇らせたラナ・デル・レイが歌うのは悲哀な恋の行方だ。2012年にデビューアルバムとしてリリースされたアルバム、Born To Dieはラナの代名詞とも言えるノスタルジックなサウンドに乗せた美しくも危なげのある詩が際立つ名曲で溢れている。時には純粋に恋をする乙女心を歌い、時には禁断の愛に溺れる哀れな女性の嘆きを。表題曲であるBorn to Dieでは愛する人と共に死ぬ覚悟を決めるというドラマチックな内容だがソフトなサウンドが上手く中和してくれる。
View more
またラナのミュージックビデオも一度観て欲しい。初期の作品にはイメージビデオがあり、どれも古き良きアメリカのスナップショットのようで美しい。後期の作品には1時間を超えるビデオ作品もあり、それぞれが一つのアート作品として完成されている。 -
[ The Best Offer 鑑定士と顔のない依頼人 ]
超一流の美術鑑定士が決してその姿を明かさない女性から鑑定依頼を受け、美術と情愛に翻弄されていくさまを描く。
View more
天才的な審美眼を誇る美術鑑定士ヴァージル・オールドマンは、資産家の両親が遺した美術品の査定依頼をとある女性から受ける。彼女の屋敷を訪ねるも依頼人の女性クレアは決して姿を現さず不信感と憤懣を募らせるヴァージルであったが、屋敷で歴史的価値を持つ美術品の一部を見つける。その調査と共に依頼人の身辺を探る彼がたどりつく結末とは…。
映画で使用されている美術品の7割が実際に美術館から借り受けた価値のある品々だけあり、そのありようは豪華絢爛そのものである。作品に登場する人物の出で立ちやスポットの一点一点に美術的趣向がちりばめられたアートにあふれる作品である。 -
[ The square 思いやりの聖域 ]
スウェーデンの若き映画監督リューベン・オストルンドによる、第70回パルムドール賞受賞作品「ザ スクエア 思いやりの聖域」。
View more
社会規範についてユーモラスかつシュールに描き出すことで定評のあるリューベン・オストルンド。本作でも、容赦なく鑑賞者に良識の挑戦を挑む。 スウェーデン・ストックホルムの美術館チーフキュレーター、クリスチャン。現代美術のインスタレーションの展示を手掛ける彼を中心に巻き起こる、差別、犯罪、貧富の格差といった問題の数々がコミカルかつテンポよく描かれた、現代人のモラリティーに対する風刺画のような作品。
映画内の随所に出現するアート作品は、現代美術そのものに対する皮肉、批評的な側面も持ち合わせつつ、鑑賞者の感情を良くも悪くも揺さぶる効果的なアクセントである。
この映画自体が、観客をこの作品の世界観に引きずり込み、怒りや不安、曖昧さなど様々な感情を引き起こさせ、思考させるところは、一種のインスタレーションといっても過言ではないように思う。 -
[ イリュージョニスト ]
50年代のヨーロッパを舞台に描かれた長編アニメーション作品。「ベルヴィルランデブー」で有名なシルヴァンショメによって2010年に初公開され、日本ではクロックワークスと三鷹の森ジブリ美術館の配給により、2011年に公開された。アニー賞やアカデミー賞など多数の映画祭にノミネートされている。
View more
主人公の奇術師タチシェフは昔ながらの手品をして渡り歩いていた。そんな彼が訪れたのは電気もほとんど通っていない田舎町。そこでは時代遅れの手品も歓迎された。タチシェフの芸に喜ぶ村人の中には、酒場で働いていた少女アリスがいた。アリスは初めて見る手品を魔法と思い込み、タチシェフの後を着いていく。スコットランドの首都エディンバラの自宅まで来てしまったアリスをタチシェフは困惑しながらも受け入れ、共に生活していくが……。
本作品は無垢な少女が大人の女性へと成長し、巣立っていく物語である。アリスが少しずつ世界を学んでいく姿に頼もしさを感じつつも、タチシェフから自立してく切なさも味わうことができる。 -
[ メアリー&マックス ]
権威あるアヌシー国際アニメーション映画祭で最優秀映画賞受賞するなど世界的に高い評価を得たクレイアニメーション。
View more
2004年にアカデミー賞短編アニメーション部門のオスカーに輝いたアダム•エリオット監督による初の長編作品。 1日にわずか4秒、完成までに4年の歳月を費やした本作は、スタッフの粘り強さと、途方もない繊細さによって生み出されていることが分かる。 フィリップ•シーモア•ホフマン、トニ•コレットといった個性派俳優が参加したボイスキャストも魅力の一つである。
本作はオーストラリアに住む8歳の少女メアリーとアメリカで暮らす44歳のマックスの物語である。 空想好きなメアリーは、ある日アメリカに住む誰かに手紙を送る。この手紙がきっかけとなり、メアリーとマックスの20年以上に渡る交流が始まる。 物語の内容は決して穏やかとは言えないが、クレイアニメーションだからこその暖かみを感じられる。
人間は誰もが不完全であり、完璧などないことを証明する作品。コンプレックスを抱える全ての人に見てもらいたい傑作である。 -
[ MIDSOMMAR -ミッドサマー- ]
4人のアメリカの大学生たちが留学生の故郷・スウェーデンの夏至祭へと招かれる。数日続く白夜の中で執り行われる人身御供の儀式に、彼らはどう向き合うのか。白昼堂々行われる残虐な行為は沢山の蠢く花に彩られ、美しくも思えてくる。
View more
日本版のポスターはデザイナー・大島依提亜と画家・ヒグチユウコが手掛けた二種で、監督や「A24」のスタッフからも絶賛され、本国でも発売された。映画界で世界中から注目を集める若手脚本家・アリアスターの、絵画のように色彩豊かな映像が観る者の目を奪って離さない。
何かに追い詰められたとき、貴方は何に救いを求めますか?