Art Point Picks
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[ 日本のアール・デコ-Japanese Art Deco ]
1910年代半ばから1930年代にかけて流行した、フランスで生まれた幾何学性と華やかさの混在するスタイル、アール・デコ。日本にもアールデコ時代があった。大正末期から昭和初期にかけて一世を風靡したデザイン様式「アールデコ」。日本のアールデコは何処から来て何処へ行ったのだろうか…。貴重なアールデココレクションの数々を、271点のカラー図版を含む500点余の写真で紹介しながら、いつのまにか消え去った日本のアールデコの懐かしさと実態とが検証されている。
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本書はアマチュアコレクターであった末續堯氏が、そのコレクションを元に美術誌「目の眼」に連載したものを1冊にまとめたもの。現代人の我々にとっても非常に目新しい意匠デザインのものばかりで、相当な量のカラー写真を眺めているだけでも楽しめる一冊。 -
[ ケルト 装飾的思考 ]
ケルト文様はヨーロッパに古くからある装飾様式である。19世紀に復興されたその装飾はアール・ヌーヴォーに影響を与え、クリムトやミュシャら画家の作品にも取り入れられた。
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多数の著書をなすケルト学一人者の金字塔ともいうべき名著。美術史では辺境に追いやられてきた装飾に光を当てた装飾論である。またケルト文様に表された精神性を読み解く格好の一冊でもある。文字を持たなかったケルト民族の、それでもその精神性の豊かさが伺える。ケルト文様の中に文字文化とは違うスタイルの「思考」を著者は発見している。名づけて「装飾的思考」その思考性は現代のカオス学のマンデルブロ集合やドゥルーズなどの哲学を彷彿とさせる。その思考性が既に7世紀のアイルランド修道写本に見られるということは驚くべきことである。 -
[ 超芸術トマソン ]
超芸術トマソンとは、著者により、「不動産に付着していて美しく保存されている無用の長物」と定義されている。その名称は、読売ジャイアンツ元選手のゲーリー・トマソンに由来する。彼は全くの不発であるのに、空振りを見せる為かのように四番打者に据えられ続けたその様が、美しく保存された無用の…という概念を表すのにぴったりであった為名称として採用された。著者の路上観察の結果発見されたトマソンの写真と共に、概念が誕生し、その地位を確かなものにしていくまでを紹介している。日常の中で目にし続けて違和感を感じなくなった風景。そのどこかにトマソン的なものを探したくなるような、日々の中に新たな視点を持てそうな一冊。この世界にハマってしまったトマソニアンには同じくちくま文庫から出版されている「トマソン大図鑑」もぜひお勧めしたい。
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[ 草間彌生、たたかう ]
世界が注目する前衛芸術家、草間彌生。毒々しいほどの彩色を放つ水玉模様(ポルカドット)や編目模様などの作品は、観る者の心を一度掴んだら放さない。
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今回紹介する「草間彌生、たたかう」は、草間彌生の激動の半生を描いたドキュメンタリー作品である。戦後15歳で単身渡米してから70年代にかけてのアメリカにおける彼女の活動が写真と自身による解説によって綴られている。キャンバスの中だけに留まらず、独特なモニュメント作品や「ハプニング」と呼ばれる前衛的アクションにまで及ぶ彼女の芸術活動。今でこそ、世界の脚光を浴びる彼女であるが、そのエネルギッシュでアバンギャルドな芸術表現は、活動拠点のアメリカ、そして母国日本においても波紋を招いた。
83歳を迎えてもなお、制作活動に命を注ぎ続ける草間彌生。「死ぬまでにあと1000枚、2000枚描くの。」と豪語する彼女の「前衛芸術家」としての凄まじい生き様もまた、作品同様に私たちの心を突き動かす芸術的表現なのかもしれない。 -
[ 彫刻家・船越桂の創作メモ 個人は皆絶滅危惧種という存在 ]
木彫の人物像作品で国際的にも高い評価をうける船越桂が、30年以上に渡って残してきた創作メモを50点余りの作品写真やデッサンとともに綴った画文集。「創作メモ」は、主に日記や紙の切れ端に書かれた走り書きだ。日本を代表する現代アーティストとして押しも押されぬ彫刻家である彼が、日々の制作の中でいかに苦悩・葛藤してきたかを伝えている。船越作品の愛好者でもそうでなくても、静かな作品の背景にこれだけの思索の跡があることにはっとさせられるだろう。
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ふと沸いて出た、しかし船越の思想が端的に表現されたメモたちーそのことばの中で育まれた芸術論、家族論、人生論は私たちにとっての生きるヒントでもある。画集としても見ごたえがあり、深い思索に裏打ちされた一言一言で充実した読後感が得られるに違いない。
美しくもどこか狂気を孕んだような静けさを漂わせる船越の作品。叫びのようなつぶやきが、作品越しに聞こえてくるかもしれない。 -
[ 青い炎-山田かまち作品集 ]
17歳の若さで急逝した山田かまち。死後、彼の詩や絵が大量に発見された。そこには1日が24時間じゃ足りないを口癖としていた彼の駆け抜けた人生そのものがあった。
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この作品集は才能を示しだした幼少期から亡くなる直前までの作品を網羅する大判サイズの作品集である。小学3年生の頃に描かれたカラフルで透明感のある数十枚の動物たちの絵はわずか1時間程で描かれ、感性に溢れている。いるはずのない海辺にライオンを描くのは彼の夢と想像力の豊かさを示す。やがて大人の階段を登り始めると、誰もがぶつかる生きることへの戸惑い、悩み、矛盾した社会への思い、そして恋愛、喜び。それらをそのまま紙上へ表現した作品群は絵の具のチューブからそのまま筆を使わずに描かれ、強い感情がまざまざと感じ取れる。山田かまちを体感するには外すことの出来ない1冊である。 -
[ 苔のむすまで ]
「私にとって、本当に美しいと思えるものは、時間に耐えてあるものである」
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世界のアートシーンにおける有数のアーティストとしての地位を確立してきた杉本博司(1948年生まれ)。代表作に自然史博物館のジオラマを撮影した「ジオラマ」シリーズ(1976年~)、全米の映画館などで撮影した「劇場」シリーズ(1978年~)、世界各地の海を同じ手法で撮影した「海景」シリーズ(1980年~)などがある。2001年、ハッセルブラッド国際写真賞受賞。
これまで写真という道具で自らの美学を追求し続けてきた彼が、初めて言葉による表現に挑む。考古学から現代美術までを縦横無尽に読み解く時空を超えた評論集。図版多数収録!
“時間”の容赦ない力と、それに耐えて生き残る美とは、いかなるものか? 「私の中では最も古いものが、最も新しいものに変わるのだ」――。「時間」について語る口調の、刹那と永遠を同時に見据えたような哲学的な響きに、心惹かれるものがある。 -
[ 現代美術を知るクリティカル・ワーズ ]
混沌ともいえるほどに作品の形や表現が速度を増して多様化している現代アートのシーン。それに呼応して批評の立場もどんどんマルティプルになっている。こんな状況の中でアートを鑑賞する私たちはなにを基準に作品の理解に取り組めばいいのだろうか?
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ご紹介の本は難解な現代アートを読み解くために、アートを広い視野でとらえ、映画、音楽、政治、美学、現代思想などの隣接ジャンルをフォローしながら、キーワードとコラムを併せて紹介する一冊。批評、理解の出発点が分かれば足場のしっかりしたあなたなりのアートの楽しみ方も見えてくるのでは?
複雑な現代アートの最前線情報が1950年から現在までが10年ごとの区切りで整理され、283の厳選された重要事項と人物のキーワードから現代美術を読み抜く、最強用語マニュアル。