Art Point Picks
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[ ジャン=ミシェル・バスキア 25周年 ]
本書は1980年代のアートシーンに、彗星のごとく現れたジャン=ミシェル・バスキアの短くも多作な生涯。1982年はバスキアにとってが輝いた年で、芸術的なストリートワンダラーが正式にメインストリームアートサークルに参加し、ニューヨークのAnnina Noisei美術館で初めての個展が開催された。当時、アート界には黒人はほとんどいなかったので、22歳のバスキアの名声の高まりは奇跡といえる。20世紀のモダニズム美術の流れを踏まえ、ジャズやヒップホップ、アフリカの民俗や人種問題など、黒人画家ならではの主題を扱った。バスキアは27歳にドラッグのオーバードーズでこの世を去った。それはアーティストのジュリアン・シュナーベルによってアメリカで映画化され、死後もその生涯と作品は注目を浴びている。
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[ Hiroshi Sugimoto: Theaters ]
日本の現代アートシーンを代表する写真家・現代美術作家の杉本博司(Hiroshi Sugimoto)の代表作の一つである。
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本書は、1970年代から現在まで継続している「THEATERS」シリーズをまとめたモノグラフ。代表的な130点、さらに廃墟となり崩れゆく劇場を写し、果てしない時間の流れや終幕を連想させる未発表の新作21点を加えた計151点を掲載している。映画館の数だけある、その空気、その歴史は、一枚の写真の中で、今でもひっそりと時を刻んでいることが、不思議と伝わる一冊となっている。経済のダメージ、映画鑑賞環境の激変などから廃墟と化したアメリカ各地の劇場で、作家自らスクリーンを張り直して映画を投影し、上映一本分の光量で長時間露光した作品である。鮮烈なまでに白く輝くスクリーンは、実は無数の物語の集積であり、写真は時間と光による記録物であるということを改めて気づかされ、これらの作品によって、私たちの意識は文明や歴史の枠組みを超え、時間という概念そのものへと導かれる。 -
[ めくるめく現代アート – イラストで楽しむ世界の作家とキーワード ]
現代アートと聞くと、よく分からない前衛的なイメージがあると思いますが、本書では非常にシンプルにイラストを交えながらアーティストやその代表作品、現代アートを知る上で非常に役に立つワードについて楽しく学ぶことができます。様々なエピソードや作家の言葉も掲載されており、キャッチーでスムーズに理解が深まるように書かれています。[アーティスト編]では、マルセル・デュシャン、ジャクソン・ポロック、草間彌生、村上隆やバンクシーなど、[キーワード編]では、コンセプチュアル・アート、インスタレーション、メディア・アートや拡張現実などが紹介されています。
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この本を読んでおけば、美術館やギャラリーで現代アートを見ても首をかしげることなく楽しめると思います。現代アートの入門書としておすすめの一冊です。 -
[ キュレーションの方法 – Ways of Curation ]
著者のハンス・ウルリッヒ・オブリストは、サーペンタインギャラリーのアートディレクターで、イギリスの『Art Review』誌が発表する“Power 100 (現代美術界で最も影響力を持つ人物100組)”で毎年上位に選ばれており、2016年には1位になった事もある世界のトップ・キュレーターです。
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本書は、オブリストがこれまでの半生を振り返りつつ、自身のキュレーションの方法について語った自伝的ドキュメントです。10歳の青年が出会ったアーティスト達との出来事や、ハラルド・ゼーマンの展示へ40回以上も通ったという脅威のエピソードなどユニークな物語が綴られています。それ以外にも、オブリストは1970-1980年代にかけての先駆的な展示やプロジェクトについて、当時のキュレーターにインタビューを行っており、一種のオーラルヒストリーによる展示史・キュレーション史とも言えるような内容にもなっています。アートやキュレーションの過去・現在・未来について、オブリスト自身の経験で培われた考えで解き明かしていきます。 -
[ 世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか ]
ビジネスの世界では「数字」と「論理」こそが「正論」と言わんばかりに絶対視されがちだが、本書では、経営における様々な局面において「美意識」という判断基準を用いることの重要性が説かれている。
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世界は、今巨大な「自己実現型欲求の市場」になりつつあり機能的な便益や価格競争力より企業や社会が持つ基礎体力としての「美意識」が、非常に重要な競争資源として浮かび上がる。著者は、この点において日本はフランスと並んで、おそらく世界最高水準の競争力を持っており、この競争力の活用の重要性を説いている。
日本のアーティストもこの日本人がもつ「美意識」という世界最高水準の競争力を武器に世界で活躍するチャンスかもしれません。世界に出て勝負したいというアーティストには一読をオススメします。 -
[ 不滅 ]
「存在の耐えられない軽さ」で知られるミラン・クンデラによる長編小説。
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「昔の偉大な画家たちは、顔の不動の表面に美を求めていたのだった。…娯楽を追い求める観光客たちは、まるで檻の中の動物のように絵画を見ていた。絵画というものは、もはや絵画それ自体の中にはないのだ。」
偉大な芸術家ダリやピカソ、ラファエロたちは何を思って作品を残したのか。人々が美術館で彼らの作品を見るとき、彼らの本質を見ることはできるのだろうか。芸術家がこの世を去っても消えないもの「不滅」を軸に、様々な境遇にある男女たちが時空を越えて、不滅への葛藤、魂と身体、愛と栄光、それぞれのテーマに向き合っていく。クンデラ作品の中でも最も深く響き斬新で「自分の存在」についても深く考えさせられる。 -
[ 夢見る美術館計画 ワタリウム美術館の仕事術 ]
1990年、青山にプライベート美術館として開館以来、毎回魅力的な展覧会で多くの来場者を楽しませてきたワタリウム美術館。以来、22年にわたって、100以上の展覧会、400本以上の各種ワークショップ、講演会、プロジェクトを実現してきた。本書では、およそ30年の活動記録をまとめた、仕事術を紹介している。展覧会に至るまでのリサーチやコンセプトメイキング、企画や打ち合わせ内容までが綴られている。鑑賞者としての我々からは、普段みる事の出来ない美術館の裏側や、作り手側の仕事を見ることができる。美術館に飾られた作品だけを見ている我々にとって、展覧会が行われるまでのプロセスを知ることにより、壁にかかった作品以上の何かを読み取ることができるようになるのではないだろうか。
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[ 魅惑の仏像23-京都・宝菩提院 如意輪観音 ]
毎日新聞社からシリーズで発行されている大型本『魅惑の仏像』はひとつの仏像を様々な角度から撮影された30ページにも及ぶカラー写真と、解説で一冊が構成されている。静寂さの中に凛とした美しさが潜む仏像の後ろ姿は、実際に目にする機会はほとんど無いため、その姿を細部まで写した写真はこのシリーズの魅力のひとつだ。仏像彫刻をする者にとっても参考になるであろう。鑑賞ガイドの他、制作方法やお寺の歴史等を踏まえた解説は大変読み応えがあり、仏像鑑賞の理解を深めてくれる。なかでもシリーズ第23巻は、ガイドブックはおろか地図にさえも載らないような小さなお寺、京都・宝菩提院にある国宝 菩薩半跏像(伝如意輪観音)にスポットを当てた非常に珍しい書籍であり、この仏像の特徴でもある天衣や装飾の様子を知ることができる。
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