Art Point Picks
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[ ミステリ美術館 ジャケット・アートでみるミステリの歴史 ]
欧米ミステリ100年の歴史を貴重な原書のカバー・ジャケット約460点で振り返るミステリ・アートブック。原書に関するエピソードやデザインに関するコラムも収録。ゲストエッセイストには作家の山口雅也や漫画家の北国邦彦を迎える。ミステリの黄金時代を築きあげたクリスティーやクイーン、カーラの活躍、20世紀にはホームズや彼のライヴァル達の活躍、戦後のサスペンスやスパイ小説の流行、ジャンルの垣根を越えて混沌と発展を繰り広げる現代・・。ミステリ小説の軌跡を個性豊でカラフルな本のアートデザインを楽しみながら辿る一冊。
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[ まなざしの共有―アメリア・アレナスの鑑賞教育に学ぶ ]
美術品を鑑賞するとき、あなたはどんなことを考えますか?きっと誰もが感動・驚き・共感・疑問などたくさんの気持ちで心の中はいっぱいになると思います。では作品を前にして他人と共有したことはありますか?おそらく多くの人がこの経験をしていないのではないかと思います。美術館は静かな場所、訪れる人が知識人。そんなイメージが作品を前にして発言することを躊躇させているのではないでしょうか。
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これはそんなあなたに読んでほしい一冊です。この本ではアメリア・アレナスが提唱した対話型美術鑑賞法を紹介しています。作品を前にして他人と気持ちを共有し合うこの鑑賞法は鑑賞者に自分では気がつかなかった発見を与えて、新たな視点や発想力を養います。この本から新しい作品との向き合い方をしてみませんか? -
[ ブロークン・ホワイト ]
初期から、人種、民族、性、そして死というテーマをもとに制作・活動するマルレーネ・デュマス。
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彼女の絵は生々しく、重い空気を持っている。観る側は感情を動かされ、描かれた者のまなざしに射抜かれる。反するように、その筆跡は軽やかで自由だ。大胆な筆遣いに、暗色と鮮やかな色使いも心地よく、彼女が大切にする主題を愛し、呼吸させるという想いがどの作品にも溢れている。注目のアーティストの、日本で初めて行われた大規模な個展の公式カタログ。
初期作品から、代表的なドローイング・シリーズをふくむ主要作品、最新作の『ブロークン・ホワイト』まで、約80点の絵画を収録。自作に寄せた詩やテキスト、インタビューなどによってデュマスをより鮮明に知ることができる。 -
[ パブリックアート政策―芸術の公共性とアメリカ文化政策の変遷 ]
1929年の世界恐慌にも拘らず、アメリカ政府は芸術に関する予算の大幅な削減を行うどころかニューディール政策の一環として連邦美術計画(FAP)施行し、芸術家が芸術家として生活するための支援を積極的に行った。このような支援は全米芸術基金(NEA)の設立につながり、展覧会、講演会、教育普及活動、アーティスト・レジデンス・プログラム、文化財の保護活動などさまざまな形式の助成が現在まで継続的に行われることになる。国家が芸術を支援するにつれて支援の理由や根拠は重要となっていく。それはまさにその国にとっての芸術の価値観を規定し、文化政策を方向づける決定的な要因となる。
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本書は、アメリカにおける国家による文化政策や民間による支援、公共空間でのアートの役割などが詳細に分析されており、日本の現状を考える上でも非常に参考となる一冊である。 -
[ さかしま ]
三島由紀夫をして“デカダンスの「聖書」”と言わしめた幻の名作。澁澤龍彦が最も気に入っていた翻訳。ひとつの部屋に閉じこもり、自らの趣味の小宇宙を築き上げた主人公デ・ゼッサントの数奇な生涯。俗悪なブルジョワ的生活を嫌い、修道院の隠棲生活に憧れを持つが、カトリックの信仰には懐疑的で自らの部屋にラテン語の文献、好みの書物(ボードレール、マラルメなど)や幻想的なモローの絵、ゴヤの版画が飾られた、美と廃頽の「人工楽園」を築いてゆく。詩人のマラルメ、画家のモロー、オディロン・ルドンをとりあげ、モローを詳述する彼の筆致には、感動と迫力が溢れている。本書の表紙を飾っているのは、オディロン・ルドンが北斎漫画の提灯お化けに影響を受けて描いたといわれる作品の顔の部分だけを切り取ったもの。
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[ GERHARD RICHTER ゲルハルト・リヒター ( DVD付) ]
2005年秋、金沢21世紀美術館と川村記念美術館で開催された、現代絵画の世界最高峰、ゲルハルト・リヒター展公式カタログ。約50点の出品作を中心に代表的な作品図版を掲載する他、ノルトライン=ヴェストファーレン美術館館長、清水穣、林道郎、畠山直哉ら豪華ゲスト陣による文章も掲載。リヒターは、写真と絵画、現実と幻影、具象的なものと抽象的なものといった境界に立ち、同時にそのどちらをも超えて、絵画の根底にある「見るという行為」の意味について私たちに問いかける。その無辺の可能性を湛えるリヒターの作品、解説ともに「リヒターの全貌」がよく分かる充実した一冊。リヒター自身が絵画論を語った、特典DVD付き。
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[ Uta Barth: The Long Now ]
ウタ・バース(1958-)はベルリン出身で長年ロサンゼルスで写真作品中心に作家活動を行っています。
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"見る"という行為を念頭に置き、被写体とカメラの間の空気を捉えるかのように焦点を外して、ありふれた風景のピントを曖昧にすることで、視覚情報における既成の概念を払拭、"見る"という行為のみを掘下げていくというコンセプチュアルなフォト・イメージが、90年代以降、欧米で高い評価を獲得し、MOMAやメトロポリタン、テート・モダン等、名立たる美術館にコレクションされている。
本書のなかで彼女は「見る事は見る物事の名を忘れる事」という禅の中の一文を、自分が手がけるプロジェクトの狙いをそれ以上に描写しているものはないと語っている。そんな彼女のアートワークを300点以上収録した本書は、初期の作品から近年のプロジェクトまでを収録した充実のモノグラフ。ぼんやりとしたシンプルな日常の風景は、私達の目前に広がるこの世界とは何なのかを静かに問いかけ、普段見逃しがちな光や空気の質感を感じさせてくれる、美しい1冊です。 -
[ Wolfgang Tillmans:Abstract Pictures ]
常に写真表現の可能性を追求し、新しい価値観を次々に生み出して、現代アートの中でも最重要視されているアーティスト、ウォルフガング・ティルマンス(1968年ドイツ生まれ)。本書は、最愛のパートナーであったJochen Kleinを亡くしたのをきっかけに人物を撮るのを止め、抽象表現に傾倒しだした頃から現在まで、およそ14年間に渡る作品をまとめた、ベスト盤ともいえる内容の一冊。
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そのほとんどの作品が、カメラさえ使わず露光を使って映し出されたまったく新しい解釈の写真作品で、"写真"が"写真"として目の前に立ち上がる瞬間の美しさが圧倒的な表現力で作品化されている。
ティルマンスの写真を観ていると、写真の本質的な意義を、撮る側でも、撮られる側でもなく、"被写体と写真との間"に立ち上がるもうひとつの領域から見出していることに気づかされ、そのあまりにも美しく、あまりにも儚い作品群に観るものの心を静かに、また強く揺さぶる1冊になっている。