Art Point Picks
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[ FIORI SCULPTURES ]
フィンランドの若手木工職人、彫刻家のアントレイ・ハルティカイネン。彼は、木工を学んだあと、フィンランドの老舗木工メーカーNikariにて修行を積み、現在はキャビネットなどの家具からインスタレーション、彫刻などの芸術作品まで、精力的に自身の作品制作に挑んでいる。
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彼のデザインする家具には、素朴の中に明瞭なる美が存在する。しかし、それは決して主張されるわけではなく、自然光を引き立たてながら、柔らかに我々の生活に溶け込む美である。
しかし、今回紹介させていただくのは、インスタレーションも積極的に行う彼のアイコン的な彫刻作品“FIORI SCLUPTURES”。洗練された自然美の有機的凝縮であり、それでありながら、どこか未来的な雰囲気を持ち合わせている。木から生まれる柔軟な曲線と質感、作品のあるがままの姿に惚れてほしい。 -
[ パズル ]
キース・ヘリングといえば先ず思い浮かぶのは、あのうねるように激しく踊りくねる棒人形のような人間の複合体だろう。沢山の人体が迷路の道そのもののように敷き詰められた画面は、見ているだけで頭を混乱させるパワーがあるのに、それがパズルになるとしたら、我々の頭の中は一体どうなってしまうのだろう。
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ここに示すへリングの作品をモチーフに制作されたパズルは、そんな私達の想像を超えてパワフルで、爆発的。動き回るヘリングのイメージと、こつこつと地道に完成を目指してゆくパズルのイメージが、あまりにも対照的で矛盾をはらんでいて面白い。もちろん完成された暁にはパズルはヘリングの一枚の絵となるのだからその達成感を目標にパズルに取り組んでみてはいかがだろうか。 -
[ CRAY FURNITURE ]
なんと不安感を煽られることであろう。見るからに不安定で非対称なその椅子は、そもそも椅子の最たる存在理由である“座る”という行為を放棄してしまったかのようである。
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新進気鋭のオランダ人デザイナー、マーティン・バース。彼の作品にはどれも、“放棄”された何かの存在がある。デザインの放棄、形あることの放棄、作ることの放棄・・・。だが、そこには確かに意匠があり、形があり、作られた物質としての“もの”達があるのだ。そしてそこにはバースの作り手としての視線が確かにある。クレイチェアは一見すると使い物に成らない壊れた椅子のような印象を与えるが、バースがデザインすることに対しての反骨精神を少しずつ椅子に練り込みながら、金属の骨格に成形用のインダストリアルクレイを塗り重ねていった作業の結果だから。 -
[ ToFU ]
まっすぐに一点を見つめ、だが辺りにぼんやりと淡い光を放つライトがある。分厚いアクリル板を介して伝えられる光は、直接的なはずなのに柔らかくて優しげだ。
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デザイナーは、今最も注目すべき人物、吉岡徳仁である。『ToFU』というタイトルから一目瞭然なように、形の出発点は日本独自の食べ物である豆腐からきていてなんとなく愛らしい。吉岡の最も抜きん出た才能と言えば、素材や自然に真っ向から対峙して行くその正直な姿勢にあるが、この『ToFU』はまさにその姿勢の表れだろう。つまり、吉岡が取り組んだのはランプシェードのデザインではなく、光そのもののデザインなのだ。光を最も美しく見せる手法が、偶然『ToFU』の形に表出したかのように、アクリルの塊はなんともシンプルで直線的で清々しい。 -
[ Homage to Mondrian ]
オランダの画家ピエト・モンドリアンの代表作である一連のコンポジションシリーズは、まるで一枚の平面の中に、まっさらな空間を切り取り、枠を導入し、構成し直したかのような印象を与える。その、モンドリアンが生んだ空間のイメージを見事に立体(キャビネット)へと起こしあげたのが本作のデザイナー、倉俣史朗である。倉俣もまた、モンドリアンが平面の中で空間を自由に操ったように、形や素材という制約に縛られることなく柔軟にデザインをする。お化けの形をしたランプ『オバQ』や、アクリル樹脂にバラの花を閉じ込めた椅子『Miss Blanche』がそれだ。モンドリアンと倉俣、それぞれ独自の視点と発想を持った二人のユーモアがクロスした新たな味わいが魅力的だ。
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[ マリリン ニューハートドール ]
1950 年代アメリカのデザイナーであるアレキサンダー・ジラルドが1961 年ニューヨークにオープンし たデザインショップ「Textiles & Objects」の看板商品として人気を博した、人形たち。その発祥は、 ジラルドの親友であったイームズ夫人がマリリン・ニューハートの手作り人形を送ったのが初まりで あった。もともとは彼女の子どもたちのために作られたものだそうで、「愛」に溢れた非常にかわいら しいデザインであり、オリジナルはオークションでも高額で取り引きされている。その、マリリン・ ニューハートが現代版として新たにデザインを起こしたのがこちらのドール。1950 年代と同じ方法で 手染め、手織りされている希少なメキシカンコットンを用い、オリジナルの生地を再現し、さらにジ ラルドオフィスの近くの女性支援センターで一つ一つ手縫いで仕上げられている。ジラドルを虜にし た「愛」らしいデザインとさわり心地の良いメキシコの手織コットン生地は癒されること間違いなし。
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[ Lion-Maxi ]
スウェーデン陶器の黄金時代を築き、今もなお精力的に制作を続ける「世界一かわいいことを考えるおばあさん」、リサ・ラーソンは動物がモチーフに愛らしい作品を多く生んできた。独自の丸みを持ってデフォルメされたフォルムや物言いたげな表情、陶器ならではの、味のある質感と色味に心癒される。そんな作品たちを色々な形で手元に置くことが出来る。
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例えば彼女の代表作である、1964年から67年に作られたライオンシリーズはとても魅力的。手のひらサイズから、人が座れるくらいの大きなものまで4サイズあり、それぞれが異なった表情をしてちょこんと座っている姿は、前から見ても、後ろから見ても、 横から見ても、ついつい笑顔になるフォルム。販売されている陶器のアイテムはスウェーデンの工場でひとつひとつ手作りで作られるため、同じ種類でも違った色や表情を持っていて、世界でひとつだけのライオンが手に入る。 -
[ ミミオオデッセイ スノードーム ]
常に鋭くスケールの大きな表現と技術の高さで己の世界を提示するアーティスト、鴻池朋子の代表的な作品に「みみお」という絵本がある。白くて丸い、手足の生えた謎の生物”みみお”が風の中、雪の中、森の中を歩いていく。全編に渡って細密な鉛筆画で描きだされた世界では、出会いや別れを経た、顔のない彼にも表情を感じることができる、魂の旅を描いた様な作品だ。
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このみみおの世界が、1つのスノードームの中に収まった。一見コミカルな形体のみみお、鴻池作品ではおなじみの6本足の狼が後に付いていく。背後では、不気味にも彼らを見つめる山が噴火している。物語内でも印象的なシーンである、みみおが吹雪に包まれていく冒険のワンシーンが、手のひらサイズの小さな空間に雪の滞留時間まで計算したスノードームによって、360度どこから観ても立体的に表現されている。