Art Point Picks
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[ イリュージョニスト ]
50年代のヨーロッパを舞台に描かれた長編アニメーション作品。「ベルヴィルランデブー」で有名なシルヴァンショメによって2010年に初公開され、日本ではクロックワークスと三鷹の森ジブリ美術館の配給により、2011年に公開された。アニー賞やアカデミー賞など多数の映画祭にノミネートされている。
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主人公の奇術師タチシェフは昔ながらの手品をして渡り歩いていた。そんな彼が訪れたのは電気もほとんど通っていない田舎町。そこでは時代遅れの手品も歓迎された。タチシェフの芸に喜ぶ村人の中には、酒場で働いていた少女アリスがいた。アリスは初めて見る手品を魔法と思い込み、タチシェフの後を着いていく。スコットランドの首都エディンバラの自宅まで来てしまったアリスをタチシェフは困惑しながらも受け入れ、共に生活していくが……。
本作品は無垢な少女が大人の女性へと成長し、巣立っていく物語である。アリスが少しずつ世界を学んでいく姿に頼もしさを感じつつも、タチシェフから自立してく切なさも味わうことができる。 -
[ メアリー&マックス ]
権威あるアヌシー国際アニメーション映画祭で最優秀映画賞受賞するなど世界的に高い評価を得たクレイアニメーション。
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2004年にアカデミー賞短編アニメーション部門のオスカーに輝いたアダム•エリオット監督による初の長編作品。 1日にわずか4秒、完成までに4年の歳月を費やした本作は、スタッフの粘り強さと、途方もない繊細さによって生み出されていることが分かる。 フィリップ•シーモア•ホフマン、トニ•コレットといった個性派俳優が参加したボイスキャストも魅力の一つである。
本作はオーストラリアに住む8歳の少女メアリーとアメリカで暮らす44歳のマックスの物語である。 空想好きなメアリーは、ある日アメリカに住む誰かに手紙を送る。この手紙がきっかけとなり、メアリーとマックスの20年以上に渡る交流が始まる。 物語の内容は決して穏やかとは言えないが、クレイアニメーションだからこその暖かみを感じられる。
人間は誰もが不完全であり、完璧などないことを証明する作品。コンプレックスを抱える全ての人に見てもらいたい傑作である。 -
[ MIDSOMMAR -ミッドサマー- ]
4人のアメリカの大学生たちが留学生の故郷・スウェーデンの夏至祭へと招かれる。数日続く白夜の中で執り行われる人身御供の儀式に、彼らはどう向き合うのか。白昼堂々行われる残虐な行為は沢山の蠢く花に彩られ、美しくも思えてくる。
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日本版のポスターはデザイナー・大島依提亜と画家・ヒグチユウコが手掛けた二種で、監督や「A24」のスタッフからも絶賛され、本国でも発売された。映画界で世界中から注目を集める若手脚本家・アリアスターの、絵画のように色彩豊かな映像が観る者の目を奪って離さない。
何かに追い詰められたとき、貴方は何に救いを求めますか? -
[ ビッグ・アイズ ]
もしも自分の作品が街中に溢れているのに、作者であると名乗れないとしたら。創作者の端くれである私はこの話が実話であるということに身の毛がよだつ思いがした。これは望んでいないにも関わらず、信じていた夫にゴーストライターとされてしまう絵描きの女性の生き様を描いた作品だ。
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娘を連れて前夫との別居を始めたマーガレットはいつも瞳の大きな子どもの姿を描いていた。新しい街でウォルター・キーンと出会い、すぐに彼との結婚を決める。マーガレットが描いた作品をウォルターが売るというスタイルで、サインは「KEANE」とした。ウォルターが絵を描いたのは自身であると言いふらし、描き手が妻であることを隠蔽する。しかし、キーン氏の絵は飛ぶように売れ、「ビッグ・アイズ」はひとつの社会現象となる。
絵画を道具としてしか見ていないウォルターと、それでもなお、絵と真摯に向き合い続けるマーガレット。絵画や藝術との向き合い方を再度見つめ直すきっかけを担う一作。 -
[ ミステリアス ピカソ 〜天才の秘密〜 ]
ピカソの友人で、サスペンスの巨匠でもあるアンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督による、ピカソの制作過程を追ったドキュメンタリー映画。
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カメラはピカソが描く画紙の向こう側に置かれ、彼が描き出す曲線、色彩などをリアルタイムに記録していく様子は、まさにスリリングそのもの。彼がいかにして、あの奇跡のような作品を生み出して行くのかを目の当たりにできる貴重な記録映像である。とともに、ただの記録映画にとどまらず、サスペンス監督ならではの仕掛けも随所に施された一作だ。しかし、残念ながら、本映画の中で描かれた20点の作品は後に全て廃棄されたため、もはやこの映画の中でしか観られない。その貴重さゆえ、この作品自体が84年にフランス政府により、「国宝」に指定されている。なお、撮影は画家ルノワールの孫にあたるクロード・ルノワール、音楽は『ローマの休日』なども手掛けたジョルジュ・オーリックという豪華スタッフ陣。美術ファン必見の一本である。 -
[ 非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎 ]
1973年にひっそりと81年の生涯を閉じ、死後多数の作品が発見され急速に評価を得た孤高のアウトサイダー・アーティスト、ヘンリー・ダーガー。そのダーガーの謎に包まれた人生と特異な作品世界に迫るアート・ドキュメンタリー。
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監督はドキュメンタリー映画の巨匠、ジェシカ・ユー。親類も友人もなく、生涯にわたって孤独の世界に身を置いたダーガーの人物像を入念なリサーチで明らかにしていくドキュメントと併行して、彼が遺した15,000ページを越える小説『非現実の王国で』に描かれた挿絵をアニメーション化し、ダーガーが生きる拠り所とした奔放な妄想世界を描き出していく。邪悪な大人の男達から子供達を救うべく壮絶な闘いを繰り広げる 7人の無垢な少女ヴィヴィアン・ガールズ。裸で男性器を付けた彼女たちの動く姿が、特異な美意識による無限の妄想の世界へと観る者を迷い込む。 -
[ ベルヴィル・ランデブー ]
2003年、カンヌ国際映画祭特別招待作品としてプレミア上映され、アカデミー賞長編アニメーション部門・歌曲賞ノミネートなど、映画賞を総なめにした、世界中を魅了するフレンチアニメーション。
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架空の巨大都市”ベルヴィル”を舞台に、小さなおばあちゃんと愛犬ブルーノが駆け巡る。極端にデフォルメされた街並みや人物、その動きには、とても可笑しみがあり笑みがこぼれてしまう。またその形態は、人間や社会の本質を鋭く捉え、表現しているようにも見える。台詞をほんとんど排しながらも、強くこの世界に惹きこまれていくのは、全体を通して鮮烈な印象を放つ、スウィング・ジャズ風の音楽も大きい役割を果たしている。ノスタルジックでナンセンスな雰囲気を漂わせながらも、エンターテインメント性が弾ける独特な作品。 -
[ ひなぎく ]
例えるなら、毒キノコのような作品です。「人形のような愛らしい姉妹が数々のいたずらを楽しむ話」と書けば一見何ということもないストーリーに感じられますが、美しい狂気さや危うさがそこに介在し、概念的な事象と相まって強烈な印象を残します。おなかが減ったら食べ、気にくわなかったら壊し、叱られそうになると泣きまねをして誤摩化す。何に対しても自由を欲求する彼女たちの行動は、本作品が制作された当時の社会主義体制に対する反抗を体現しているのかもしれません。彼女達の発する言葉は何度も見るうちに詩のように反芻され、抑圧された社会を脱却した新たな世界を想起させます。アート的な映像やファッションも注目の一つです。1966年に作られたチェコの作品ですが、先鋭的な雰囲気がすでに醸し出されていることに驚きます。
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